2022 Oct 04 Tue

【装い今昔物語】『コムデギャルソン』と『ヨウジヤマモト』から紐解くモードな服の世界

装い今昔物語 昔の雑誌を紐解けば、今の装いが見えてくる。連載一覧はこちら

いであつこ

仏・イボルンヌ大を主席で卒業。平成服装女子学院トレンドマスコミ学部准教授。服飾誌研究家として活躍中。コラムニストのいであつしとは双子の兄妹。

日本を代表する世界的デザイナーの川久保玲さんと山本耀司さん。モードな服が不得手なボーイな女だって、「コムデギャルソン」と「ヨウジヤマモト」は知っています。むしろ機会があれば着てみたいとちょっと思ったりもして。そこで今回はモードな服の世界について少し紐解いてみましょう。

川久保玲さんと山本耀司さんがパリコレで初めてのコレクションを発表したのは1981年です。

当時のモードファッションは、いわゆる「ボディコン」というボディラインを美しく見せるデザインが主流でした。そこに登場したのが全身真っ黒で、身体を覆い隠すような大きなサイズのコムデギャルソンとヨウジヤマモトの服です。今でこそ黒のワントーンコーデなんて普通ですが、黒は反抗や反逆を意味する色としてファッションの世界ではタブーでした。デビューコレクションは「黒の衝撃」と呼ばれて、パリコレに一大センセーションを巻き起こしたのです。

当時のコンサバな女性ファッション誌『MORE』の1983年3月号を紐解くと、「パリのファッション誌だけではなく、ニューヨーク・タイムズ、ニューズウィークと、ファッションにはそれほど熱意を示さないマスコミまでが大々的に報じた事件だった」という出だしで、黒の衝撃について川久保玲さんと山本耀司さんのインタビューが特集されています。

当時のモードファッション

次のコレクションでは黒い服に虫食い穴やかぎ裂き、ほつれなどを施した「ボロルック」を発表。感度の高い人たちの間で大人気となり、渋谷の公園通りのパルコ前や青山の骨董通りでコムデギャルソンやヨウジヤマモトを着た人をよく見かけました。全身真っ黒な彼女たちは「カラス族」と呼ばれて、流行語にもなったのです。

カラス族の多くは、モード系ブランドの販売員でした。いわゆるこれが「ハウスマヌカン」です。1983年7月15日号の『アンアン』を紐解くと、「おしゃれ人間の間で大評判!いまいちばん興奮的職業『ハウスマヌカン』になる!」というタイトルで、初めてハウスマヌカンが特集されています。コムデギャルソンの渋谷パルコ店の店員さんが「あるときはスタイリスト、そしてモデル、アドバイザー、バイヤーのスーパーウーマン的職業」という見出しでモデルさながらに紹介されています。

パリコレの黒の衝撃から2年、ハウスマヌカンブームの到来です。まだ『夜霧のハウスマヌカン』と揶揄される前の、DCブランドブーム夜明け前のおしゃれでモードな時代のお話でした。

おせっかいなファッション用語辞典

  • ボディコン

    ボディコンシャスの略。80年代バブルを象徴するイケイケファッションとして使われるが、本来はパリやミラノコレクションでアズディン・アライアやジョルジオ・アルマーニが提案したモードスタイル。

  • 渋谷の公園通りのパルコ前・青山の骨董通り

    「コムデギャルソン」や「ヨウジヤマモト」などの直営店や旗艦店があって、そこで働くハウスマヌカンが憧れの存在だった80年代の東京で最もモードなエリア。

  • 『夜霧のハウスマヌカン』

    1986年、DCブランドブーム絶頂期に人気職業のハウスマヌカンの実態を面白おかしく歌って大ヒットした流行ソング。作詞はいとうせいこう。DCブランドブームについてはまたの機会で。

連載「装い今昔物語」

装い今昔物語

昔の雑誌を紐解けば、今の装いが見えてくる。

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[LaLa Begin 2022年 10-11月号の記事を再構成]資料協力/神保町magnif マンガ/しまだたかひろ ※掲載内容は発行時点の情報です。

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