2022 May 20 Fri

“書く” 時間にトキメキを♪「インクポットBOUQUET」でペン先から始める「丁寧な暮らし」

文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ 国内外のブランドがひしめき、文房具大国といわれる我が日本。高級品が威厳を放つ一方で数百円の筆記具がイノベーションを起こすなど、貴賤上下の別のない世界はラーメン店がミシュランの星を獲得するニッポングルメと相似関係にあり。というワケで、文房グルマンのイラストレーター、ヨシムラマリ氏がその日の気分とお腹のすき具合でさまざまな文房具を食リポしちゃいます。描き下ろしイラストとともにご賞味あそばせ!

 

最近は、何もかもが便利になった。スマホを手元で何回か操作するだけで、なんでもすぐに手に入ってしまう。そんな時代ならではの反動か、ここ数年「丁寧な暮らし」という言葉をさまざまな場所で目にするようになった。

「丁寧な暮らし」とは、あえて身の回りのことに手間と時間をかけ、ありきたりとも思える日常と向き合う中で、自分なりの心地よさを見つけること、らしい。なるほど、とは思う。ちょっと憧れるな、という気持ちもなくはない。だが、具体的に何をどうすればいいのか?といわれると、正直なところ、よくわからない。

だが、何をするのが「丁寧な暮らし」かはわからなくても、これをしないのが「丁寧な暮らし」なんじゃないか、ということは薄々わかる。例えば、醤油を大きな瓶のまま食卓にデン!と置くような生活。これはなんとなく、「丁寧な暮らし」ではなさそうだ。などと考えていると、醤油を大瓶から小分けして食卓に置くための、素敵な醤油差しが欲しくなってくる。

万年筆インクにとっての醤油差しといえば、インクポットである。

昨今のインクブームの流れから、万年筆だけではなく、ガラスペンやつけペンを使う人が増えている。一度インクを入れると、別のインクに交換する前に内部の洗浄・乾燥が必要な万年筆に対して、ガラスペンやつけペンであれば水でさっとゆすいで拭き取るだけですぐに次のインクが使えるため、インクを気軽に替えながら書くことを楽しめるからだ。

ガラスペンやつけペンを使うとき、ボトルインクをそのままデン、とデスクに置いても構わない。しかし、ペン先がどれだけインクに浸かっているかがわかりにくく、インクをつけすぎてしまったり、ガラスペンだとボトルの底にペン先をぶつけて欠けてしまったりする不安がつきまとう。また出し入れする際、ペン軸がボトルの口に触れてインクがつき、それに気づかずに握って手が汚れる、ということもしばしばである。

インクポットに使う分だけのインクを小分けにしておけば、こうした些細なトラブルを未然に回避することができるのだ。

私のお気に入りは、ビーカーなどにも使われる耐熱・耐薬品ガラスのメーカー、ハリオサイエンスが作る「インクポットBOUQUET」だ。インクポットというと、どちらかといえばトラディショナルなデザインのものが多いのだが、こちらは理化学用ガラス製品のメーカーだけあって、小さな三角フラスコを模したインダストリアルな雰囲気がたまらない。

ボトルインクをスポイトで移すときも、理科の実験のようでウキウキする。使わないときはフタをしておけるので、移したインクも数日程度であれば保つ(ただし、密閉はできないのでなるべく早めに使い切ること)。インクを替えるときも、水でさっと流して乾かすだけなので簡単だ。

そして何より、使うのが楽しい。お気に入りのペンで、お気に入りのインクで、お気に入りのインクポットで。手紙や日記など、ちょっとした書きものをする時間は何ごとにも代えがたい。「丁寧な暮らし」に造詣の深くない私でも、これは何かよいことをしているな!と爽やかな気分になれるのだ。

先に「丁寧な暮らし」とは「あえて身の回りのことに手間と時間をかけ、自分なりの心地よさを見つけること」と書いた。「丁寧」と聞くと、反射的に前半の「手間と時間をかける」のほうに意識が向きがちだが、本当に大事なのは後半ではないかと思う。

手間と時間をかけることが目的になってしまって自らを追い詰めるようでは、本末転倒である。自分に対して手間と時間をかけることによって、「私は私を大切にしている」という感覚を持てること。それが、「丁寧な暮らし」の楽しみなのかもしれない。

インクはボトルのまま使ったって、一向に構わない。でも、あえてインクを移す手間をかけることで自分にとっての楽しみが増すのなら、そのときはインクポットを使えばいいのだ。

ちなみに、我が家の醤油はインクと違って今も大瓶のまま食卓に出ているが……そのうち、素敵な醤油差しも買いたいな、とは思っている。

ハリオサイエンス インクポット BOUQUET
5500円 
https://hariosci.thebase.in/items/26336124

Plofile

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

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